社労士が見抜く
中小企業に潜む

5つの壁

共創デザインで組織を変革する

この記事の要点

中小企業には5つの典型的な組織課題が存在します。「事例クレクレ症候群」「縦割り組織」「個人攻撃文化」「過度な内製主義」「失敗を許さない文化」です。これらは個人ではなく組織の体質の問題であり、共創デザインのアプローチで解決可能です。社労士は単なる労務管理の専門家から、組織開発のパートナーへと役割を進化させることができます。

はじめに

社労士の現状と課題

中小企業の組織課題を解決する前に、まず社労士自身が直面している現状と課題について考えてみましょう。多くの社労士が「もっと価値提供したい」と感じながらも、その方法がわからず悩んでいるのが実態です。

📊 社労士の仕事の実態


😟 社労士の悩み

「手続き業務だけでは付加価値を感じてもらえない...」
「経営者の本当の悩みを解決できる社労士になりたいけど、何から始めればいいのかわからない」
「コンサルティングに自信がない。経験も知識も足りない気がする」

📚 社労士の学習機会

重要: これらの課題は社労士個人の問題ではなく、業界全体の構造的な課題です。しかし、適切なアプローチとツールがあれば、誰でも「組織開発のパートナー」として成長できます。
あるある ①

「ウチには合わない」が口癖の事例クレクレ症候群

「先生、他社の事例を教えてください」
「IT企業だからできるんでしょう。ウチは製造業だから無理です」
「地方の中小企業に合う事例はないんですか」

問題の本質

事例を求める行為自体が問題なのではなく、事例から学ぼうとしない、自分ごと化しない点が本質的な課題です。内向き志向の組織文化が背景にあり、「ウチ」という言葉を強調する姿勢そのものが、変革への意気込みの欠如を示しています。


詳細な問題点


🎯 共創デザインのアプローチ

「振り返りの議論」を重視し、以下の問いを投げかけましょう:

  • この事例から、自社に取り入れられる要素は何か
  • なぜこの取り組みが成功したのか
  • 自社との違いは何で、その違いをどう乗り越えるか
重要: 対話を通じて自社なりの答えを見つけるプロセスを支援することが最も重要です。

事例を参考にすること自体は良いことです。問題は「そのまま真似しようとする」「自社に合わないと諦める」という思考停止の姿勢です。事例は学びの素材であり、そこから自社なりの解決策を考えることが大切です。
「事例を参考にしながら、御社らしいやり方を一緒に考えましょう」と提案してください。事例を「正解」として押し付けるのではなく、対話を通じて自社なりの答えを見つけるプロセスを支援することがポイントです。
あるある ②

部署間の壁が厚すぎる縦割り組織

「営業部と製造部が連携しない」
「本社と現場の温度感が全く違う」
「新しいプロジェクトを立ち上げようとしても、他部署が協力してくれない」

問題の本質

各部署が自分たちの仕事だけに集中し、組織全体の最適化が図れない状態に陥っています。「総論賛成、各論動かず」の組織は、やがて求心力を失い、新たなビジネスチャンスも逃します。


連携ができない7つの要因


🎯 共創デザインのアプローチ

小さな社内越境から始める3ステップ

  1. 自部署のことを知ってもらう
    社内イントラネットで部署紹介を掲載、社内ブログを書く、社内勉強会を開催する
  2. 小さな共創プロジェクトを仕掛ける
    「この課題について、〇〇部の□□さんに15分だけ相談させてください」といった小さな越境から始める
  3. 経営陣を巻き込む
    部署間連携を評価する仕組みや社内横断プロジェクトの制度化を提案する

中小企業では限られた人材で最大の成果を出す必要があるため、部署間連携は死活問題です。縦割りが続くと組織全体の最適化ができず、新たなビジネスチャンスを逃し、組織の求心力も失われていきます。
いきなり大規模なプロジェクトを立ち上げるのではなく、「15分だけ相談させてください」といった小さな接点から始めます。成功体験を積み重ねることで、社内共創の文化が育っていきます。
あるある ③

ミスをした人を責めて終わりの個人攻撃文化

「またミスをして! もっと注意しなさい」
「君の責任だからね。次は気をつけてよ」
「この失敗で会社がどれだけ損したと思ってるんだ」

問題の本質

ミスやトラブルが発生した際、原因を個人に帰結させ、「本人が気をつける」「ダブルチェックを増やす」といった個人の気合・根性・注意力依存の再発防止策しか出てこない状態です。


個人攻撃文化の5つの弊害


🎯 共創デザインのアプローチ

再発防止策を考える「5つの枠」

  1. ルールの問題はないか
    業務手順や規程に不備や曖昧さがないか検証する
  2. ツールの問題はないか
    使用しているシステムや道具に改善余地はないか
  3. プロセスの問題はないか
    業務の流れや手順に無理や無駄がないか
  4. 環境の問題はないか
    職場環境や作業環境に問題はないか
  5. 能力・教育の問題はないか
    必要なスキルや知識が十分に提供されているか
重要: 人を責めずに仕組みを疑う姿勢が、心理的安全性を高め、イノベーションを生み出します。

もちろん個人の注意も大切です。しかし、それだけに依存すると限界があります。人は必ずミスをするものという前提で、ミスが起きにくい仕組みや、ミスが起きても大事に至らない仕組みを作ることが重要です。
この5つの観点で要因を整理することで、個人攻撃から脱却し、組織として成長する再発防止策を講じることができます。原因分析と責任追及を分けて考えることが、心理的安全性の高い組織を作ります。
あるある ④

何でも自分たちだけでやろうとする過度な内製主義

「外注するお金がもったいない」
「自分たちでやれば勉強になる」
「他社に頼むのは負けた気がする」

問題の本質

コスト削減を重視するあまり、何でもかんでも自分たちの創意工夫と気合・根性でカバーしようとする姿勢が、組織の成長を阻害し、メンバーを疲弊させています。


過度な内製主義の3つの副作用


🎯 共創デザインのアプローチ

外部リソース活用の3ステップ

  1. 小さくお金を使う体験をする
    繁忙期に事務作業を外注する、会社の経費で本を買って皆で知識を仕入れるなど、お金を使ってみて良かったことを言語化する
  2. 越境体制を組む
    チーム内に能力がなければ他チームと組む。自部署になければ他部署と組む。自社になければ他社と組む。中にないものはない、それを素直に認める
  3. 社労士先生自身が「外の専門家」として価値を示す
    先生の関わりによって組織が良くなった事例を具体的に示し、「外の力を借りることの価値」を実感してもらう

短期的にはコスト削減に見えますが、長期的には人材の疲弊、成長機会の損失、イノベーションの停滞などのコストの方が大きくなります。お金を使う(払う)ということは、社外と共創することであり、新しい知識や価値観が流れ込む重要な機会です。
まず社労士先生自身が「外部の専門家」として価値を提供し続けることです。先生の関わりによって組織が良くなった具体的な事例を示すことで、「外の力を借りることの価値」をクライアントに実感してもらえます。
あるある ⑤

失敗を許さない石橋を叩きすぎて壊す文化

「当社はミスを許さない文化が強いんです」
「失敗しないよう事前チェックにひたすら時間をかけます」
「石橋を叩いて渡る社風です。チャレンジしようとしても止められます」

問題の本質

経営陣は「チャレンジを推奨する」と言いながら、実際には失敗やミスが許容されない組織体質が根強く残っている状態です。言動不一致が組織を硬直化させています。


失敗を恐れる文化の5つの弊害


🎯 共創デザインのアプローチ

Try & Learn文化を育てる3つの方法

  1. 「Try & Learn」の文化を育てる
    失敗を「学びの機会」と捉え直す。「何がうまくいかなかったのか」「なぜうまくいかなかったのか」「ここから何を学べるか」「次に活かせることは何か」を問いかける
  2. 小さな実験の場を作る
    いきなり大きなチャレンジをするのではなく、「小さく試す」文化を育てる。新しい働き方を一部署だけで試す、新商品のアイデアを社内の一部の人だけで検証する
  3. 経営陣のメッセージを変える
    「うまくいかなかったことも報告してほしい」「失敗から学ぶことを評価します」といった明確なメッセージを、経営陣が繰り返し発信する

失敗を許すことと無責任を許すことは違います。重要なのは「失敗から学ぶ」姿勢です。失敗を隠したり、同じ失敗を繰り返したりすることは許されませんが、チャレンジした結果の失敗は学びの機会として捉えるべきです。
例えば、新しい働き方を一部署だけで1ヶ月試してみる、新商品のアイデアを社内の一部の人だけで検証してみる、といった限定的な取り組みです。リスクを最小化しながら学びを得ることができます。
ビジョン

社労士のあるべき姿

これからの時代、社労士に求められるのは「経営のパートナー」としての役割です。単なる手続き代行を超えて、企業と共に成長し、社会に貢献する存在へ。

🤝 経営伴走型の社労士

💼 会社と一緒に成長し、社会貢献する

クライアント企業の成長を自分ごととして捉え、長期的な視点で伴走する社労士。単発の相談対応ではなく、継続的な関係性の中で組織の成長を支援します。

  • 経営者の右腕として戦略的な人事施策を提案
  • 従業員のキャリア開発や働きがいの向上に貢献
  • 地域社会の雇用創出や経済発展に寄与

🎯 単なる事務代行ではなく、経営課題解決に寄与する

労務管理の専門知識を武器に、経営課題の本質を見抜き、解決策を提示できる社労士。人事労務の視点から経営に価値を提供します。

  • 採用・定着・育成の一貫した人材戦略の構築
  • 組織風土改革による生産性向上
  • 人事制度設計による公平性と納得性の向上

🌉 越境する社労士

自分の専門領域に閉じこもらず、異業種や他分野との接点を持つことで視野を広げる社労士。越境経験が新しい価値創造につながります。

ポイント: 越境することで「労務の専門家」から「経営のパートナー」へと進化できます。
テクノロジー

共創デザインAIの可能性

テクノロジーの力を借りることで、すべての社労士が「組織開発のパートナー」になれる時代が到来しています。アマネAIは、社労士の可能性を大きく広げるツールです。

🤖 AIツールの活用

💡 手続き以外の価値提供を支援

AIが定型業務を効率化することで、社労士はより付加価値の高い業務に集中できます。手続き業務に追われる日々から解放され、本来やりたかった経営支援に時間を使えるようになります。

  • 組織診断の自動化: AIが企業の課題を可視化し、改善提案をサポート
  • 就業規則の最適化提案: 法改正対応や業界ベストプラクティスの反映
  • 面談内容の分析: 経営者や従業員の悩みをAIが整理し、解決策を提示
  • 研修プログラムの設計: 企業の課題に合わせた最適な研修内容を提案

🚀 経験や特別な能力がなくても活用可能

「コンサルティング経験がない」「組織開発の専門知識がない」という不安は不要です。AIがあなたのパートナーとなり、ベテランコンサルタントのような提案をサポートします。

  • 膨大な事例データベースから最適な解決策を提示
  • 対話形式で段階的に課題を整理
  • クライアントへの提案書を自動生成
  • 継続的な学習により精度が向上

📈 社労士の成長支援

AIを活用することで、従来の社労士の枠を超えた成長が可能になります。テクノロジーは競争相手ではなく、あなたの能力を拡張するパートナーです。

未来: 共創デザインAIは、すべての社労士が「組織開発のプロフェッショナル」になれる環境を提供します。今日から、あなたも一歩踏み出してみませんか?

共創デザインAIについて詳しく知りたい方へ

組織開発支援やAIツールの活用に関するご相談、
セミナー・研修のご依頼など、お気軽にお問い合わせください。

📧 お問い合わせはこちら

まとめ:社労士先生だからこそできる組織開発支援

これらの5つの課題に共通するのは、個人の能力や性格の問題ではなく、組織の体質や仕組みの問題であるという点です。


従来、社労士先生の役割は労務管理や給与計算といった管理業務が中心でした。しかし、これからの時代、社労士先生には「組織開発のパートナー」としての役割が期待されています。

社労士先生が共創デザインを学ぶメリット


中小企業の組織課題は、一朝一夕には解決しません。しかし、適切なアプローチと継続的な支援があれば、必ず変化は起こります。社労士先生は、経営者と従業員の両方と接点を持つ、組織にとって非常に重要な存在です。その立場を活かして、「組織の体質」を変えていく支援をしていただきたいと思います。

重要な用語・概念の解説

用語 解説
共創デザイン 組織内外の多様な関係者が協力し合い、新たな価値を創造するためのアプローチ。個人の能力だけでなく、組織の仕組みや文化を変えることを重視する
心理的安全性 チームメンバーが対人リスクを恐れずに、自分の意見や懸念を率直に表明できる状態。失敗を恐れずチャレンジできる組織文化の基盤
縦割り組織 各部署が独立して動き、部署間の連携や情報共有が不足している組織構造。組織全体の最適化が図れず、機会損失につながる
Try & Learn 小さく試して学ぶアプローチ。失敗を責めるのではなく、失敗から学びを得て次に活かす文化。イノベーションの土台となる考え方
社内越境 自分の所属する部署や領域を超えて、他部署や他領域のメンバーと協働すること。組織の壁を越えた共創の第一歩
組織開発 組織の効果性を高めるための計画的な取り組み。人材育成だけでなく、組織文化、仕組み、プロセスなど組織全体を対象とする
内製主義 外部リソースを活用せず、すべてを自分たちで行おうとする姿勢。適度な内製は良いが、過度になると成長機会の損失や人材の疲弊を招く
エンゲージメント 従業員が組織に対して持つ愛着や貢献意欲。高いエンゲージメントは、生産性向上や離職率低下につながる